2013年01月31日

フィルムアート/デイヴィッド・ボードウェル&クリスティン・トンプソン(意訳 ―― 2)




映画作品はそれぞれ特定の技法をパターン化して発展させる。そのように、特定の技法の選択をまとまった形で発展させる意味のある使い方を、スタイルと呼ぼう。
スタイル(A)と形式上のシステム(B)は相互作用している。

(A)スタイル ―― 技法、ミザンセン、撮影法、編集、音
(B)形式上のシステム ―― 物語、カテゴリー・ジャンル、レトリック、抽象、連想


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3 形式の上のシステムとしての物語
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 物語構成の原則
 ストーリー情報の流れ
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(プロデューサーのアーサー・フリード)がわたしの方にやってきてこう言った。『いったいそれで何をしようというのだね?』『まだわからない』とわたしは返答した。『でも、わたしが歌わなくてはならないこと、そしてそこには雨が降っていなくてはならないことはわかってるんだ』。それまでの映画のなかに雨が降ったことはなかったんだよ。
―― 俳優兼振付師、ジーン・ケリー 『雨に唄えば』について 119





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4 ミザンセン ―― 舞台、照明、衣装、演出
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わたしたちが経験するのは絵画でも小説でもなく、映画である。
ここからは映画媒体の特徴を理解していく。
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・ショットに関する二つの技法
・ミザンセンと撮影法
・ショットとショットを関係づける技法、編集
・映像と音との関係

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●ミザンセン 172
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本来フランス語であるmise-en-sceneは「(劇を)舞台上にのせること」を意味し、そもそもは、戯曲を演出することに適用された。
映画的には「映画のフレーム内に現れるものを監督がコントロールする」という用語。

●ミザンセンとリアリズム 173
現実世界(における人間の振る舞いや様式)=リアリズムとし、これを基準にミザンセンの有効性やリアリティを評価しようとする向きがある。しかし現実世界のリアリズムは「文化、時代、個体差」によって再定義される動的な(暫定的な)ものでしかない。
また映画作品を構成する要素にしても、各時代の影響ありきで成立しているので(例:1950年と2010年の言葉遣いは同じじゃない)厳格な「リアリズム」に則ったミザンセン分析は妥当性を欠いた「非現実」に陥る危険性《パラドックス》がある。

●リアリズムを標榜する
ミザンセンは、ミザンセンの一形態・志向でしかなく、それとはまったく異なった効果 ―― 喜劇的な誇張、超自然的な恐怖、抑圧された美など ―― を追求するケースも多々ある。
ミザンセンが映画内でどのように展開され変化していくか、そして他の映画技法や諸作品とどのような関係性があるかに留意すること。

【 ミザンセン 】
主に
1.舞台設定(セッティング)
2.照明
3.衣装
4.演出
がこれにあたる。

●舞台設定(セッティング) 175
――
演劇では、人間が何よりも重要である。スクリーン上では、ドラマは俳優なしでも成立しうる。バタンと音をたてて閉まるドアや、風に舞う木の葉、浜辺に打ちつける波によって、ドラマチックな効果を高めることができる。いくつかの映画の傑作では、人が単に、添えもののような装飾として、あるいは、真の主役である自然に並置されるものとして使われている ―― アンドレ・バザン" target="_blank">
――

●セッティングの勘所
・既存の場所を選ぶ
・セットを作る
・色、デザイン
・小道具(マグガフィン)

●照明 186
フレーム内の明るい領域と暗い領域が助けとなって、各ショットの全体的な構図が生み出され、それによって、観客の注意が特定の事物やアクションへと導かれる
またハイライトと影は空間の感覚(ニュアンス)、構図、バランス、形や質感を生み出し、強弱(光量)にコントロールされる。
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明るさ ―― 木目、模様、光沢、輝きなどの意味、象徴
暗さ ―― ミステリやサスペンスなど「覆う、隠す」ことの心理的な効果
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・キーライトとフィルライト 188
主光源と副光源。
映画の照明にはこの二つが組み合わされている。
キーライト、フィルライト、バックライトの「三点照明」が映画の基本的な照明のセット。
これによって奥行きの発生、立ち位置におけるキーパーソンの起立、画面内の視線の誘導とモデルの優劣やプライオリティを示唆できる。

・影
二つの基本タイプがある。
 付随的な陰=陰影
 投射的な影=投影

「光にはすべて、もっとも明るい点と、拡散して完全に見えなくなる点がある。……その中心の核から暗闇のなかへ溶けて消えていくまでの光線の旅は、光の冒険でありドラマである」 ―― フォン・スターンバーグ 187

「カラー映画でクロースアップを撮影するときは、背景に視覚的な情報が多すぎます。背景は、顔から注意をそらしてしまう傾向があるんです。だから、古い白黒映画の女優の顔はすごく鮮明に思い出されるんです。( 中略 ―― ノスタルジックに)ディートリッヒ……ガルボ……ラマールを思い出すでしょう? 白黒で撮影されると、被写体がまるで内側から光を当てられているように見えるからです。顔が過度にスクリーンに露出されて現れると ―― いわゆるハイキーの技法で、欠点も消えるんですけど ―― 、まるで明るい物体がスクリーンから立ち現れるように見えたのです」 ―― ネストール・アルメンドロス(撮影監督) 188


・ライティングのタイプ 187
 フロント・ライティング ―― 影を取り除こうとするライティング。平面的にモデルを浮かび上がらせる。サイドライトとのセットで容貌を立体的に浮き立たせられる。
 バックライティング ―― 被写体の後ろから。シルエットを生み出すことが多い。フロントとの組み合わせで、目立たない光で輪郭をはっきりさせることができる。(=エッジ・ライティング、リム・ライティング)
 アンダーライティング ―― 被写体の下から。容貌を歪めて見せる。恐怖を煽ったり、熱源・光源を示す。
 トップ・ライティング ―― 真上から。グラマラスなニュアンスを出す。

●演出 192
――
演出は俳優の演技を助け、創造性を豊かにする。
・視覚的要素 ―― 外見、身振り、顔の表情
・音声 ―― 声、効果音
(現実的であることが「良い/正しい」演技ではない。映画内における自律性と必然性を鑑みること。(たとえば突飛なSFやコメディと、シリアスなドラマとでは求められる演技が違う)
上の「ミザンセンとリアリズム」を参照すること)

また、ミザンセンにおける演出は人物に限らない。
ここにあげた諸要素の形象《フィギュア》をいかにコントロールし、多様な運動と複合的なイメージを作り出せるかが監督(スタッフ)の腕にかかっている。

※なぜミザンセンが観客を捉える? 201
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人間の視覚システムは、時間的にも空間的にも「変化」を知覚するのに適している。言い換えれば「差異を認知することに適している」のだ。
さらに、「見る」という意図と汲み取られる情報は、観客それぞれの経験に基づいて質が決定される。ここにも差異が機能している。
こうして「印象付けの技法」であるミザンセンがその複合的な作用でもって、観客の印象を決定的な役割を担う。


フィルムアート/デイヴィッド・ボードウェル&クリスティン・トンプソン(意訳 ―― 1)











posted by bibo at 04:25| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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